こころの紋様 -ミニ説教-


〜今年の迷惑年賀状〜

欲は捨てよと言いながら


 ひところ350枚ほど買い求めていた年賀葉書だが、最近随分余りだしてきました。老齢と共にお付き

合いの幅が狭くなったというつもりもありません。たぶん私が差し出す人たちが次々と鬼籍に入っていく

からなのでしょうか。それにしてもこの激減は異様な気がします。その分宛名書きの手間が減って楽に

なった面もありますが、寂しい気もします。しかし、年賀状書きの激減の原因が差し出し先の方の鬼籍

入りだけなのかと一概にそうとばかりは言えず別の原因なのかも知れないという思いにいたりました。

 それは毎年の我が差し出す迷惑年賀状が原因かも知れないという思いがしました。

 私はただ「謹賀新年・・今年もよろしく」程度の形式的なご挨拶

だけの年賀状では何となく自分としては面白くもなく、つまらない

気がします。だからもう、二十数年来「賀正」というタイトルの年に

一度発行のいわゆる年刊ミニコミ紙として、年賀葉書一枚に

かけるだけのエッセイの駄文を小さな文字で書いてきました。

 購読者は私に年賀状を出してくれた人なです。ところが、

それは下手な文章の上に下手な小さな書き文字なので、読み

づらくなっていて虫眼鏡がいるとか、読んでないよとか大変

迷惑がられているようなのです。

 しかし、中には読むのを楽しみにしているとか、眼鏡を拭いて待ってるよと言う方もいて素直で疑い

を知らない愚かな私は、それをお世辞であるとか、皮肉であるとか言うことを理解できずに単純に

大喜びして、また差し出してしまいます。受け取る人たちは毎年毎年、読みづらい駄文を送られては

たまりません。だから購読拒否が続出しても仕方がないのです。それでも懲りない私は今年も駄文

をつづった年賀状をしたためて出してしまいました。以下がその今年の我がミニコミ年賀状です。



賀正  本年もよろしくおねがいもうしあげます。

                          平成二十一年己丑 歳旦


 このごろ写経ブ―ムというわけでもなかろうが、時々我がホームページを見て

「写経をしたけど書き上げた用紙はどうしたらいいのでしょうか」という問い

合わせが来る。納めるところがなければどうぞこちらへお持ちなさいと答えた

ところ、一人の若者が自ら書き貯めた写経用紙をどっさりと置いていった。

 若いのに写経をしているとは感心なことだ思いながら、後日整理のために

中を見ると、写経に託す願い事として「学業成就」はまだしも「宝くじ一等

当選」「ロト6一等当選」「TOTO―BIG一等当選」と書かれてあり、

随分欲張った願いだと思わず苦笑させられた。
叶えてやりたい気もするが、


私自身が叶わぬ願いをどうして人さまに叶えて

あげられようか。 私だって宝くじに一度は

当たってみたいものだが、未だ一度も当たった

ためしがない。それもそのはずである。

 籤運のない自分にはどうせ当たらぬ宝くじ

券を買うお金がもったいないと、買い惜しみ

するものには当選の権利がないらしい。


 しかも、行列までして三億円はほしくないと強がり、へそ曲がりの私には

縁もない。買い物をしたスーパーの福引のガラポン(正式名称は新井式回転

抽選器というらしい)を五回廻してペコちゃんのぺろぺろアメを五つもらった。

 ガラポンの中にはきっとハズレの白玉しか入っていないのじゃないかと

疑念を抱くさもしい己が情けない。「人さまに欲は捨てよと言いながら、

あとから拾う我が欲を恥ず」である。しかしそれでもこの不況の風の中、

参詣に訪れた小さな子どもたちに「和尚さんからのおみやげだよ」と、かの

ペロペロアメを渡し、子どもからも、その親からも「ありがとう!」と感謝

され、喜ばれて、その喜びをタダで味わいながら、目出度く明るい新年を

迎えられたことはまことに有難い限りである。






最後までお読み頂いてありがとう御座います。

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