こころの紋様 -ミニ説教-

~人生いろいろ~

- お面白海岸物語 -



 承福寺より眺める玄界の冬の海は寒風が吹きさらし、人気なき浜べは荒波が次々と寄せ来ては

とどまらず生まれては消え生れては消えてゆく。この荒波はさまざまな貝殻や漂着物を運び来て

残してゆきます。夏の海の水浴びの人たちの群れの姿の消えた海にはまた一味違う冬の詩が

あり歌が生れ、そして激しく、また悲しいドラマが生まれる、そんな気がする冬の海です。

 いろいろの貝ありてこそ拾はれめ

       ちぐさの浜のあまのまにまに

   松山のまつが浦風ふきよせば

        ひろいて忍べ恋わすれ貝


 万葉の歌人たちも波辺に打ち寄せられる空貝

(うつせがい=貝ガラ)一つにロマンを感じ、三十一

文字にその思いを託し、また心を慰めたのかも

知れません。海岸はいつも打ち寄せる波の数だけ

多くの物語をうみだしているのかもしれません。

 私がかってジョギングを始めたころ山をかけ下りて玄界の浜辺を走りながら、折々に気の向くままに

美しい貝ガラや面白い形の貝ガラ拾って帰っておりましたら、いつの間にか随分の数と量になって

まいりました。こんなに沢山の形や色の種類の貝がいたのだと改めて感心し、暫く間、意図的に

貝殻を拾い集めその名を貝類図鑑で調べてみたら約300種もありました。

  世界の海には数十万種の貝がいるということですが、私が走るわずか3~4キロほどの海岸なが

らも大小さまざまな貝がいてそれぞれが生息領分を分けあっていろんな生き方をしているのです。

 貝の世界にも共存共生があり、また弱肉強食の修羅世界があり、生き物としての避けえない

厳しい現実があるようです。

 黙して語らぬ貝でさえ、さまざまな生き方があるのです。

ましてや、さまざまな人種、さまざまな言葉、さまざまな考え、

さまざまな生き方をしている人の世ならなおさら複雑なのは

当然です。歌の文句じゃないが〝人生いろいろ〝でいろ

いろの人の寄り集まりが人間社会であり、いい人もいれば

悪い人もいて出会いがあり別れがあり喜びや悲しみが

混在しています。

 これが世の中であり、現実なんだとつくづく思ったことでした。だからこそ人の世には詩があり歌が

ありそしてまたドラマが生まれ小説が作られていくのでしょう。

 人は誰でも皆〝自分″という小説の主人公に違いありません。そしてこの先の筋書きがどんな

展開になるのかわからない、自分自身でつくりだす長編小説であり、神のみぞ知る興味津々の

お楽しみ小説の中に人は誰もが生き、歩み続ける主人公なのだと思いました。



前回までのお話もどうぞ!



最後までお読み頂いてありがとう御座います。

 ぜひご感想をお寄せ下さい。


E-MAIL ns@jyofukuji.com

 戻り  次へ