<今月の禅語>    

体露金風(たいろきんぷう)(碧巌録)
     僧問う「樹凋み 葉落つる時如何」
     雲門曰く「
体露金風



体露=そのまま露われ出ているさま。
金風=秋風のこと。秋は五行説(木、火、土、金、水)では金にあたる。
よって秋風のことを金風という。


秋深まり木々は生気を失い落葉し、早や地上では

枯れ葉舞う時節である。この情景を眺めて、

ある僧が雲門和尚「和尚もこの時節のように大分

お年を召されたようですが、近頃はどんな心境で

おられますか?

雲門すかさず「体露金風」=わたしはもう煩悩

妄想の木の葉をすっかり吹き払った秋風のように

無心で、すっきりした心境だよ。と答えた。

そこには是非、善悪、好悪、とか言う分別心の

枝葉も削ぎ落ちてしまっている。

あらわれでたる真実そのものの境地を吐露した

ことばである。


 先日、登山愛好のご婦人3人を案内して、承福寺裏の湯川山(471米)

に登りました。

さほど高い山ではありませんが、久しぶりの登山で一汗もふた汗もかきました。

この登山道は十年ほど前、わたしの散歩、というより自分の趣味のトライ

アスロンのためのトレーニングコース用として、昔の木こり道やけもの道を

つないで、自分が作ったプライベートの登山道でした。
  そこに一般登山者が通りだし、やがて湯川山の

メイン登山道となってしまいました。

道の開拓者としての私は、今も時々は登山道の

道しるべなどの維持管理は心がけたいと

思って登っています。

寄る年なみには勝てません。ご婦人たちはこの夏には富士山に登ったという

元気ママさんたちで、「和尚さんは元気がいいですね」と気づかってくれます。

「元気ですね」と言う言葉は誉め言葉として素直に受けとめれば好いのですが、

私はこの「お元気ですね」の言葉の裏に「(お歳にしては)お元気ですね」と

いう含みを感じてしまい、あらためて自らの老年齢への自覚をしなければという

思いにさせられます。こんなことを言えば年寄りのひがみに聞こえそうですが、

「和尚さんは元気ですね」と言われれば「いやいや、どうして、どうして、

体露金風じゃよ!」と言う心境でありたいと思っています。



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