こころの紋様 -ミニ説教-

~同じ仏教国でありながら~

- 幸福の尺度は何なのか -



 平和ボケの日本などと揶揄し、自国を卑下する声が聞かれますが、ボケはともかく平和であることは

何であれ喜ばしいことかもしれません。世の中は不況の叫びと消費税の引き上げの賛否や年金改革、

原発の反対、推進などの対立論争の激しさはあっても、まだまだ立場が変われば意見や物言いも

変わる範囲の論争であり、今の日本ではまだテロも内紛も武力革命の緊迫した声は伝えられては

いません。先般は貧困のためか食糧もなく電気もガスも止められた一家の餓死者が発見されたり、

孤独死の悲しいニュースもありましたが、それでもまだ、生活保護など社会的救済制度を利用すれば

何とかなったことでしょう。
 一般家庭のほとんどは暖房、冷房機器が備わりTVも

車も揃い、これ以上何も要らないくらいで、見る限り

では日本は豊かで恵まれた国であることは疑いようが

ないほどです。エコ推進や省資源化を言いながら、

それでも政府も社会も消費が拡大しないと不況が

続くというわけか、もっと買え、もっと買えと言って

消費拡大を奨めています。その豊かな国である

はずの日本では毎年自殺者が3万人以上もあり、

交通事故死者の倍以上もあることは何を物語る

のでしょうか。

 昨年ブータンの若き国王ジグミ・ケサル・ワンチュク夫妻が来日され、ユーモアを交えての国会での

演説や東北の震災地の学校を訪問し子供たちを励まされて、さわやかな印象を残し、ちょっとした

ブータン旋風が起こして帰国されました。そのブータンという国ですが、中央アジアの小国で九州より

ちょっと大きいくらいで、人口は70万人程度だそうですが、注目すべきは自殺者がゼロだということ

です。生活程度は日本より貧しいし、病人もいれば不自由な人もおられることながら、幸福度は

95%で世界一幸福度の高い国だと言われています。

 ブータンは仏教国で一家に一人は僧侶になるくらいだとも聞きましたが、仏教の教えが国民の中に

生きているからなのでしょうか。それからブータン政府の方針が国民総幸福量(幸福感)という国民の

幸福度を示す尺度(GNH)を定めて幸福社会の実現を目指していることが特徴です。世界の一般の

国での国民総生産(GNP)で示されるような経済的、金銭的、物質的豊かさを目指すのでなく、

国民総幸福量(GNH)の精神的豊かさを追求する政治が行われているのです。

 ちなみに、ブータンの国民総幸福量(GNH)そ指針

として心理的幸福、健康、教育、環境、コミニュティー、

良い統治、生活水準、自分の時間の使い方などを

地域的に聞き取り、その対策を打っているそうです。

 そして何より人間関係を大事にし、隣人関係、

家族関係を大事にされて互いに深い信頼関係を

築いているらしい。

 なるほど地域が家族のように仲良く互いに支えあったならば、日本のような孤独死や自殺など起き

ようがないことでしょう。ブータンの95%の人が幸福感を抱き人間として生まれたことに感謝している

ということで、さらに残る5%の不満足についての対策もなされて100%を目指していることでした。

 同じ仏教国でありながら自殺者3万人の日本とは大違いです。経済至上主義を第一に掲げる日本が

幸福なのか、貧しくとも仏教の教えを第一とするブータンが幸福なのか、歴然としています。人の心に

触れる政策がなされなければ、いくら金持ちになっても国民の心は安まるものではないことです。

 不況になれば企業はすぐに派遣切りをしたり、弱者斬り捨てが行われる政策の国に幸福や安心が

得られるでしょうか。



最後までお読み頂いてありがとう御座います。

 ぜひご感想をお寄せ下さい。

E-mail ns@jyofukuji.com

 戻り