こころの紋様 -ミニ説教-

~知らずに作る罪業~

- 「絶対正しい」という間違い -



 ずいぶん以前の西日本新聞の三面記事。“車内スリと勘違い!――OL,学生を身体検査――

という見出しが目につきました。それは西鉄電車内での出来事です。

 福岡駅発の特急電車内で久留米市内の男子学生が隣に立っていたOL嬢からスリと間違われ、

犯人扱いをされて、公衆の面前でポケットの中まで調べられるという災難に遭ってしまいました。

 ところが後で駅員立会いで調べた結果OLが持っていた自分の手提げバックの中から、

財布が見つかったのです。OLの完全な勘違いと、他人のポケットの中まで手を入れてまで

調べるという行き過ぎにはいささかあきれるばかりです。学生はかんかんに怒り、OLは

平謝りだったことでしょう。
 恥をかかされた学生は全く迷惑なことで、お気の毒に

思いますし、OLの軽率さと強引さは批判されても仕方が

ないことでしょう。しかし私はこの事件を他人事として

笑えず、また野次馬的にOLの非常識の行動を

責める気がしません。というには、私たちは誰でもいろ

いろと思い違いや、勘違いをして人を疑ったり、恨んだり

軽蔑をしたり、あるいは迷惑をかけたり不快な思いを

させたり、させられたりしているからです。

 誰も悪気があって、思い違いや勘違いをする人はいません。しかし、その勘違いで人を疑い、

あるいは罪に陥れ、著しくその人の人格や名誉や信用を傷つけてしまうこともあります。

 「別に悪気はなかったのだから」との言い訳は通用せず「すみませんでは済まん」と名誉棄損で

訴えられることもあるでしょう。そして怨み恨まれて大変な罪業を造るけったにもなりかねません。

 「ならぬ堪忍、するが堪忍」というように、わが身に受けた迷惑なら、忍耐と寛容の心で恨まず、

憎まずに人を許していけるかもしれないが、自分がしらずに造る罪業は、人様は許してくれるとは

限りません。

 私は何にも悪いことをしていないのにと思っていても、

いつの間にか誤解され、悪者扱いにされたり信用を大きく

傷つけられ、取り返しのつかないこともあることです。

 逆に自分の思い違いや勘違い、思い込みや誤った

情報や憶測によって安易に人を疑い批判し恨んだり

傷つけたりすることがないとも限りません。

 それは自ら知らず知らず造る罪業で、その悪業は悪業を招き、無尽の悪業を重ねていく場合も

あります。不確かな情報、単なる憶測の他“絶対間違いない”“自分の考えは正しい”という自分の

思い込みや勘違いで簡単に結論付けたり、決めつけることの危険さを、彼のスリ事件を起こした

OLは、私たちに身をもって教えてくれたのかもしれません。



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