こころの紋様 -ミニ説教-


~「江戸しぐさ」に学ぶ~

- 現代に失われつつあるもの -


 昔、江戸の町は今の東京の人口密度より高い世界有数の大都市でした。日本の中心として江戸の

町が誕生して以来、全国各地より人々は流入し、庶民はその狭いの生活地域でトラブルが起きない

ように、お互いを尊重しつつ、人間関係を如何に円滑に過ごすかということが必然的に求められたこと

でした。如何に気持ちよくお互いに生きていくかという庶民の生活の知恵として生み出されたのが

「江戸しぐさ」といわれる当時の生活ルールです。 このかつての「江戸しぐさ」が最近見直され、先年

には公共広告機構の啓発ポスターが山の手線の駅に張られたり、東京・千代田区の教育委員会では

道徳の時間の教材として取り上げるように指示したとか、企業の社員研修でも取り入れられてたり、

東京ディズニーランドでも接客心得に生かされているとか聞きました。現代に忘れられた人間関係の

在り方や社会での道徳的教訓が見直されてきたのかもしれません

 この江戸しぐさの中に「肩ひき」と言うのがあります。

道を歩いているとき、人とすれ違う際に左肩を路肩に

寄せて歩くことでお互いの肩がぶつからないように、

ちょっとした譲り合いの心がけです。また江戸しぐさの

「うかつあやまり」というのは、たとえば他人から自分

の足を踏まれたときに、怒る前に「すみません、こちらが

うかつでした」と自分が先に謝ることによってトラブルを

避で、その場の雰囲気をよく保つための心得です。今でいえば 車の接触事故、誤れば自分が悪いと

認めてしまうことになるので誤まってはいけないという変な事を言う風潮がございますが、江戸しぐさでは

損とか得とかじゃなくてまず相手への思いやりを大事にということが基本になって、自らが先に謝ると

いうおおらかな気持ちです。「傘かしげ」というしぐさは雨の日に互いの傘を外側に傾け、ぬれないように

すれ違うことですが、現代の社会でいうなら電車の中など濡れたままの傘でまわりに迷惑をいかけない

ことでしょうか。江戸しぐさの「時泥棒」というのは断りなく相手を訪問し、または、約束の時間に遅れる

などで相手の時間を奪うのは罪にあたるとされました。お金は借りても後で返せますが、時間は返す

ことは出来ません。これは弁済不能の十両の罪とさえいわれる

ほど罪なこととして慎まねばならないことでした。

 「逆らいしぐさ」とは「しかし」「でも」と文句を並べ立てて逆らう

ことをしないことです。年長者からの配慮ある言葉に従うことが、

人間の成長にもつながるというわけです。 また、江戸のルール

では「三脱の教え」があります。それは初対面の人に年令、

勤め先、身分は聞いてはいけないとされていたらしい。

 それは失礼にあたるというより余計な情報を入れることにより一種の色眼鏡で相手を見てしまい、

その人の素顔や本性を見通せなくなることを避けるためでした。江戸しぐさの種類はまだまだ沢山

ありますが,このような江戸しぐさを身につけている人のことを「粋」(いき)と言い、身につけていない

人は「野暮」と言われました。江戸の人ばかりでなく現代に生きる私達も野暮であってはならない

ことです。江戸に限らずそれぞれの地域にはそれぞれのルールや決めごとがあり、祭りや行事を

通して行政の及ばないとこで地域社会が円滑に行われているところに日本人優秀さが光るの

だと思います。



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