こころの紋様 -ミニ説教-


〜「たろし」占いが当たるわけ〜

- 大豊作への期待 -


  先日、岩手県花巻市の石鳥谷という町の古くからの知り合いというのか、友人と言うのか、板垣寛と

いう人から珍しく電話がありました。彼は(有)板垣農場を開いて、精神薄弱の青年たちに農業従事者と

して働く場を与えて実の親以上に慕われている人なんですが、その板垣さんから今年は「大きなたろし」

になったので見に来ませんかと言う電話なんです。「たろし」というのは「つらら」のことで漢字では「垂氷」

と書きますが、石鳥谷の山の沢の滝が「つらら」状の一本の氷の柱となって、それが日本一の大きさに

なるということで知られてます。

 その「たろし」が大きくなるとその年は豊作で「つらら」が

小さくやせていると不作、凶作になると昔からいわれていた

らしいのですが、板垣さんは岩手大学農学部を出てから

ずっとそのたろしの寸法を測り続けて、そのつららの

大きさと、その年の作柄状況を記録し続けてきて、

何十年にもなるのです。

 それが気象庁の天候予測より良くあたり、農水省のお米の作況予測より良く当たると評判になって、

毎年の計測日の2月11日は「たろし」占いとしてTV取材があったりで賑わうそうなんです。

 実は私も昔、20年も以前ですが彼の招きでその大たろしをこの目で確かめたいと思ってわざわざ

岩手まで出かけて行った事がありました。それはたろし滝と言われているのですが、小さな滝の流れが

徐々に凍てつき、淡い翡翠色の円柱状になったもので、それはそれは自然の神のなせる技であり、

自然の造形の美に感動を覚えたものでが、びっくりしたのは私と共に滝を見に登った何人かの

ご婦人たちが思わず大たろしに手を合わせて「般若心経」を唱えだしたんですね。

 それほど神々しく畏敬の念が湧いてきたんだと思います。

この「たろし占い」ですが、占いと言っても、いわゆる霊感

占いとは、手相や八卦占い的なものでなく、700年も前

からこの土地の古老が伝承としてたろし滝の出来具合で

豊作、不作を判断していたことを板垣さんが実際の寸法を

計測して、統計を研究によってお米の作柄を占う板垣流

「たろし占い」を確立されたものなんです。

 それは正確な自然観察と統計に基づくもので、自然科学そのものの占いなんです。今年のたろしの

大きさが何メートルになるか、計測が2月11日なのでまだ判りませんが、私が行った時は6メートル

30センチだったんです。一番大きかったのは1978年の測定では過去最大の約8mあり、その年の

出来高は大豊作だったと言いますが、電話の様子からして今年もそれに次ぐくらいの大きさなん

だろうと思っています。ただ、このたろし占いが九州の福岡まであたるかどうかは分かりませんが、

このような自然現象の観測による豊凶の占いは各地もあり、福岡では福岡市西南の油山観音、

ひばり観音で知られる正覚寺や、飯盛神社のお粥のカビの生え具合で占う粥開き、粥占いや、

佐賀の綾部神社の風による旗のなびき具合の観察で、風雨の予測や作物の吉凶をうらなう神事が

行われていますが、これらの占いも昔からの伝承された記録や経験に基づいての占いであって

決して非科学的なものとして片づけてはならないことだと思いますし、先人の知恵に学ぶ謙虚さが

必要だと思いますが如何でしょうか。




前回までのお話もどうぞ!


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