こころの紋様 -ミニ説教-


〜長寿の秘訣〜

お天道さまが知っている


  日本人の平均寿命は延びて八十歳の大台を超えてすでに久しくなりました。世界一長寿国日本は

世界のどこの国も経験したことのない高齢化社会への戸惑いがあり、老人福祉、老人医療保険等の

対応に遅れて様々なひずみもでています。後期高齢者医療保険が年金より天引きされるとあっては、

その該当者ならずとも、間近かにその立場にある私としても無関心ではおれないところです。

 これは何年も前のことではあるが、こんな高齢者問題の世の悩み

をよそに長寿世界一を誇り先年亡くなった徳之島の泉重千代さんが

二度目の還暦を迎え百二十歳のお祝いをしたときのことです。

 このとき取材に当たったNHKラジオのレポーターが、現在の

重千代翁の心境をインタビューしていました。そのとき「長生きの

秘訣はなんですか?」という質問に重千代さんは即座に「お天道様

が知っとられる」とさらりとかわしてしまいました。

 レポーターは「いつもニコニコ、くよくよせず、適度の運動をして、食べ物は好き嫌いせず・・」とかいう

返事を期待していたのでしょうか。ところが「お天道様・・云々」の予期しない答えに重千代翁の真意を

解しかねた様子でした。「お天道様が知っているよ」とはなんと痛快な答えでしょう。今までなん十回、

なん百回となく翁の長寿にあやかって訪ねてくる人々から浴びさかけられる「長寿の秘訣は?」という

月並みの質問にはうんざりした翁の苦肉の返答だったかも知れません。「自分で長生きをしようとして

生きてきたわけじゃない。お天道様に生かされて生きてきただけなんだから、それはお天道様に

聞いてくれよ」とでの言いたかったのです。

 好きな酒を適度に楽しみ好きなものを食べ、お天道様と共に起き、

お天道様の沈むと共に休み、自然と共に生きてきただけ、だから

長生きの秘訣というものがあるなら。それはお天道様に聞いて

おくれよ。お天道様が一番わしのことをご存知じゃ。というのが

重千代さんの心境だったんだと思いました。当然のことながら、

翁はいちいちカロリー計算などしては食べてはいないでしょう。

 重千代さんのお世話をしていた泉順江さんは「残念ながら、うちのおじいちゃんは仙人のように寛大で

おおらかな精神は持ち合わせていません」というように、怒るときは激しく怒り、悲しいときは涙を流す。

このように喜怒哀楽をありのままに出し、カラッと生きるのも長生きのコツだったかもしれません。

やはり重千代さんは雨の日、風の日があってもお天道様と共に生きてこられたのでしょう。

お天道様とは単に太陽のことだけでなく、お天道様の天とは神と同義語、即ちお天道様と共にとは、

また神と共にでありましょう。




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