こころの紋様 -ミニ説教-

 

心の痛みを教える

 

法事である檀家に行ったところ、幼稚園児ほどの男の子が、私を見るなり、ああ、ハゲだ!と言って

我が剃りたての頭に指差をさす。母親は「これ、ケンちゃん」と慌ててさえぎったが、その子はなお

勢いづいて「ハゲ、ハゲ、ハゲ坊主」といたずらっぽくはやし立てきました。檀家の子ではなく、親類先

の子らしい。この子は、剃り上げた頭の坊さんを見るのがよほど珍しかったのかもしれません。

よくある子供の単なる悪ふざけなのです。まだ分別の無い幼い子供のことだからとニコニコと笑って

いれば済むことです。

 だが私はハゲと言われて嬉しくは無い。

私はその子をとっさにつかまって引き倒して、思いっき

りお尻を三、四度ひっぱたいてやりました。

子供はいきなりの反撃と、予想外の折檻にあい、びっ

くりして泣き出してしまいました。

「どうだ、人をからかったら痛い目にあうのだぞ、もう

言わないか!」ときつい口調で有無を言わさずにうな

づかせました。「よーし、じゃあ堪忍してやろう。これで

あいこだから握手をしよう。男同士仲直りをしたんだ

から、もう泣くな!握手したんだから、もうボクと和尚

さんは友達なんだからなかよくしようね。」と無理やり

友好平和条約を結ぶ。この間の四、五分のやり取りに

母親は只おろおろしていたが、坊やの無条件降伏、

和尚側の要求の全面的受け入れによって、無事停戦

が成立し、ホッとしたようすでした。

  私はハゲと言われて嬉しくは無いが、子供の

悪ふざけに対して本当に怒ったわけではありま

せん。だが喩え悪意なき子供の悪ふざけと

はいえ、他人の身体に関する欠陥、欠点、容姿

に対する軽蔑や、誹謗は言う側の意識以上に

言われる側の人間にとっては大きな侮辱と受け

取られ,また心の傷となり、怒りとなり、恨みと

なって行くことだってあるのです。

子の事を誰かが教えてやらなければなら

ない事です。

 

時々小児殺害事件が起き、犯人の残虐さ、非道さが伝えられます。しかし、その犯行の動機が、

被害者の子供が、日頃犯人が足を引きずって歩くビッコをからかい、あざけり笑っていたことへの

仕返しであったということもありました。

いつも陰湿ないじめにあっていたいじめられっ子が、ある時復讐心を燃やし、逆にいじめっ子を慘

殺してしまったということもありました。罪は犯行者にあるとは言え、その犯行の原因を被害者が

知らずにつくっている事だって少なくないのです。人をいじめてはいけない、差別してはいけないと

、人を罵ってはいけないと教え、頭の中で理解させても、やはり本当にその言葉によっていじめら

れ、、罵られた人の心の痛みや、怒りの気持ち、恨みの気持ちの怖さを分からせることが出来る

でしょうか

 

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